脳神経外科 木村 俊運のページ
脳外科手術をより安全に
未破裂脳動脈瘤の治療
未破裂脳動脈瘤の破裂を防ぐ根治的な治療法としては、開頭手術で動脈瘤を露出してつぶす方法(クリッピング術)と、カテーテルを用いて瘤を中から詰める血管内治療(カテーテル手術)の2つがあります。
いずれの方法も、100%安全(=治療のリスクがない)というわけではないので、瘤の位置や大きさによって適切な治療法を選択するわけです。
私自身は開頭手術クリッピングを行っておりますが、明らかに血管内手術に適した動脈瘤については、担当の入江是明医師と協力しつつ治療方針を決定しています。
開頭クリッピング術について
顕微鏡手術を用いて拡大した視野で、脳の溝(いわゆる脳のしわ)を丁寧に分けることで、動脈瘤を露出します。周りの神経、細い動脈などを傷つけないように、動脈瘤の根元にチタンやニッケル合金でできたクリップをかけて、血流を止めることで、動脈瘤の中に血液が入らないようにします。
【長所】
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動脈瘤をほぼ完全に閉鎖することができ、再発は非常に稀です。
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原則として、動脈瘤の場所、大きさ、形に関わらず処置することができます。
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動脈瘤からの出血など、予期しない事態が起こっても対処しやすい。
【短所】
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開頭することによる負担が避けられない。
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切開することによる皮膚の違和感 (半年程度で改善します)
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口を大きく開けづらいなど (2週間~3ヶ月程度)
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出血量に関しては、下手な血管内手術・カテーテル検査より少ないこともあります。
クリッピングに適した脳動脈瘤:中大脳脳脈瘤、内頚動脈瘤、前交通動脈瘤、ネックの幅が広いもの、比較的大きいもの、内部に血栓を伴うような動脈瘤等
当院では、通常の未破裂動脈瘤*であれば、こめかみ近くの生え際に6~7センチほどの切開でできる小開頭法を用いています。(髪の毛は、生え際付近の髪を幅15mm程度カットさせていただきます)
*通常の動脈瘤;脳底動脈先端部など最深部、および約12mm以上の大型瘤を除く。
この方法は、出血量も極めて少ない侵襲の低い治療法です。
切開部分のみの剃毛で行ないますから、もちろん丸坊主になる必要もありません。概ね入院期間は8~14日(手術前日入院、術後7,8日目に退院)です。
また、複雑な動脈瘤で、バイパス手術を併用する必要がある場合にも、局所の剃毛と、毛流線を考慮した美容形成的な切開により、傷ができるだけ目立たないように行っております3。
*3 脳神経外科の国際雑誌に掲載されました
Minami N, Kimura T, Uda T, Ochiai C, Kohmura E, Morita A.
Effectiveness of zigzag Incision and 1.5-Layer method for frontotemporal craniotomy.
Surg Neurol Int. 2014;5:69.
脳動脈瘤手術の例
本ページの内容は前職(NTT東日本関東病院)在職中、ホームページ上での情報提供のために作成した内容を改変したものです。