先日のStroke 2018で内頚動脈狭窄症に対する内膜剝離術(CEA)のセッションがあったので、これに参加してきた。
CEAは脳外科の中では、顕微鏡を用いて行う施設と、マクロ(ルーペも含む)で行う施設がある。
大学の関連施設からの発表があり、そこでは伝統的にマクロでの内膜剝離を行っているということだった。
私自身は、もともとマクロで始めて、ここ6年くらい顕微鏡下で行っているが、やはりメリットがないと感じた。
そこで応援(?)に出てきた上司の先生の言うことには、「CEAはマクロの手術の延長なので、(中略)こうするのが妥当と考えている」、ということだった。
なるほどと思ったのは、「やっぱりマクロがよさそう」ということではなくて、手術のコンセプト自体が違うということだった。
つまり、我々にとっては内膜剝離術は「顕微鏡手術の初中級」といった位置づけなので、全体としての話がやっぱり噛み合わないのだろう。
どの辺りが初中級かというと
倍率変更がそれほど必要ない
鏡筒角度の変更もあまり必要ない
焦点のみときどき変更
つまり顕微鏡操作だけでいうと初級手術ということになる。
疾患自体は初中級...
因みに自分が考える顕微鏡下手術の一番のメリットは
記録に残せる
と言うことである。
マクロ派も天井カメラで録画しているところが多いが、移っているのは前屈みになっている術者か助手の頭だけということがよくある。
記録に残せることで、
トラブルがあったときにどこが悪かったのかを確認できる
例えば術後に頚動脈が詰まってしまうことがあるようだが、その原因がプラークの処理のためか、あるいは糸のかけ方がマズかったのか、解離が起こっていたのではないか、といった可能性が考えられる。
術者は自分の頭のなかで振り返りができるかもしれないが、正確な検証はできず、うやむやになってしまう可能性がある。
これはmedico-legalな意味も一応ある。
トラブルがなくても、同様に改善すべき点を明示できる
とくにlearning curveの途上にある医者が、自分の手術の振り返りができる
記録に残せる、という他に、
内頚動脈の遠位部の視認性が全く違う。
これはルーペでもよいかもしれない。
ただし、そうすると一番難しいキモの部分は術者(と助手)しか見えず、いつまでも職人芸になってしまう。
器械出し看護師、麻酔科、外回りのスタッフが手術の進行を把握しやすい
これもトータルとしてトラブルを防ぎ、スムーズな手術に貢献すると考えている。
一応、デメリットとしては
皮切が長いと画面に術野の全貌が収まらない
Zeissの新型顕微鏡だと大丈夫?
マイクロカバーのコスト(3,000~4,000円)
助手側が立体視できないと、内シャントの出し入れが若干やりにくいかもしれない。
ということだろうか。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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