脳神経外科 木村 俊運のページ
脳外科手術をより安全に
髄膜腫
髄膜腫は、良性脳腫瘍の中でもっとも頻度が高く、脳ドックなどでもよく見つかります。
昔は、脳を包んでいる膜のことを髄膜と呼んでいましたが、この膜から生えてくる腫瘍です。
脳の外から育ってくるので、脳の組織とは基本的に別物です。
だんだん大きくなってきて、言語や手足の動きをつかさどる部分を圧迫するようになると、言語の問題や手が動かしづらいなどの症状で見つかることがあります
また脳の圧迫などのために、けいれん発作(症候性てんかん)を起こし、その原因を調べる過程で見つかることもあります。
治療の方法
硬膜は、頭から背骨の中まで骨の内側を覆っていますが、髄膜腫はこの硬膜のどこにでもできます。(頻度はさまざま)
そのため、髄膜腫ができている場所に応じて、皮膚切開・アクセス経路、体位を考える必要がありますが、ほとんどの部位では、この経路は確立されています。(術者の好みはあります)
髄膜腫の手術では、古典的に4Dということが言われます。つまりDetach (切り離す)、Devascularize (栄養を送っている動脈から切り離す)、Debulk (中身をくりぬいて体積を減らす)、& Dissect (周囲組織から剥がす)という方法論です。
これらの操作がやりやすいように、アクセスを考えます。
腫瘍の回りの脳が傷んで、MRIで腫瘍の周囲が腫れているような場合には、4番目のDissect(剥がす)で、きれいに剥がせる面が無くなっていることがあり、機能を残せるかどうかが微妙になります。
そのため、手術の難しさという点からは浮腫が起こる前か、あるいは範囲が狭いうちに治療するのが良いと考えます。
血管や神経を巻き込んでいて、剥がせない場合には(良性腫瘍なので)残すことがあります。
この残った部分は外来で経過を見ることになり、大きくなってくる場合には、サイバーナイフなどの放射線治療を行うことがあります。