脳神経外科 木村 俊運のページ
脳外科手術をより安全に
05-01-2018
前職での内容ですが、脳の一般的なバイパス手術(浅側頭動脈ー中大脳動脈吻合術)で、自分が繋いで閉塞というのは、医者3年目からやっているもののあまり経験がないのですが、他のドクターが縫って詰まったのを「縫い直す」という機会が何回かあり、そのときの方法と成績について報告しました。
トラブルシューティングなので、あまり経験したくない内容です。
10-0 という髪の毛より細い糸で縫うわけですが、その糸を、血管を傷つけないように切断して、中の血栓をとりのぞき、再度同じ場所で、(できれは1回目の針穴を避けて) 縫合することで、9割以上の方で、術後も開通していたという内容。
03-17-2018
福岡で行われたSTROKE 2018で2演題を発表してきました。
一つは手術の話で、後頭蓋窩の未破裂脳動脈瘤では3D融合画像を用いることで、できるだけsimpleもしくは慣れたアプローチを選択できるのではないか、というものです。
なんでもかんでも骨を大きく切って、骨を削るのではなくテーラーメードな治療ができます、という内容。
もう片方は未破裂脳動脈瘤の出血率に関する報告で、遅れてきたUCAS Japan批判(?)のような内容です。論文を投稿中のため、採用されたらここでも報告します。
01-12-2017
前職でのやや特殊なバイパス手術におけるTechnical report. "Occipital Artery to Middle Cerebral Artery Bypass: Operative Nuances."がWorld Neurosurgeryに採択されました。
脳梗塞に対するバイパス手術で最もよく行われるのは、浅側頭動脈を用いた浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術ですが動脈硬化や手術、以前のケガなどのためにこの動脈が使えないことがあります。
その際の選択肢がいくつかありますが、あまり報告されてない「後頭動脈」を用いたバイパスを行う機会が何度かあり、その手術の際に気を付けるべきポイントをまとめて投稿したものです。
この手術は、調べてみるとRF Spetzlerという脳外科界のレジェンドが1974年に1報告していて、実際にはときどきは行われていたのだろうと思います。
実際には2010年ころにそのような方の手術を担当する機会があり、1例報告で投稿したのですが、いろいろな雑誌に採用拒否されていたものです。その後、たまたま同じような手術を経験させていただき、なんとか形になったものです。
とは言っても、「後頭動脈を丁寧に露出すれば、かなり長いドナーができる」というのが主な内容で、当たり前と言えば当たり前の内容ですが、前例があるのとないのでは手術適応の判断に影響するので、それなりには意味があると考えています。
特に再発脳動脈瘤で、浅側頭動脈がはじめの手術で無くなっていて、バイパス+クリッピングを行う場合などには検討の余地があると思われます。