MGH & Harvard Medical Schoolからの論文
Neurosurgery. 2018 Mar 17.
Older Patients Have Better Pain Outcomes Following Microvascular Decompression for Trigeminal Neuralgia.
Bick SK1, Huie D1, Sneh G1,2, Eskandar EN1.
三叉神経痛に対するMVDの長期成績は、高齢者の方が若い人より良かったという内容。
抄録にはBNI pain scaleの平均値の比較しか出ていなかったが、この類の話は痛みが全くないか、ほとんど無くなった方の割合で評価しないとダメじゃないの?と思って本文を読んでみると、さすがにきちんと割合の評価もされていた。
痛みが薬をのまなくても大丈夫なレベルの成績が、60歳以上では83.3%に対して、60歳未満では57.3 %ということ。
57.3% ?
いろいろ理由を述べているが、60歳未満の成績が悪すぎて、大きな問題があるのではないかと思われる。
本文中にも書かれているが、高齢な患者さんの方が、脳が少し萎縮している分、三叉神経の全周を観察するのが容易である。そのため、見えないところに当たっている血管(責任血管)があった、ということが少ないはずである。
しかし、髄液を十分排液し、horizontal fissureなどの脳溝を丁寧に分けて拡げることで、若い方でも十分な観察が可能なはずであり、この操作を省いて不十分な観察に終わっている可能性があるのではないか?
また以前に書いたが、韓国の有名な教授が招待講演していた際、当たっている血管を三叉神経痛から離して固定するtranspositionではなく、血管と神経の間にものを挟むinterpositionで治療していた。
そのためかどうかは明らかではないものの、同様に治療している顔面痙攣の奏功率と比べると著しく悪いことから、やはり手術法に問題があるのではないだろうか。
(三叉神経はどこで何が触っていても痛い、と考えるべき)
今回は平均f/u期間3年程度での奏功率だが、術直後、または1ヶ月後くらいには痛みが取れていたのだろうか?
この論文の内容を信じるならば、60歳未満の若年者では根治的治療である手術治療は成績が悪いので、神経ブロック(やγナイフ)を勧めるべきということになるが、少なくとも日本で三叉神経痛の治療を行っている脳外科には全く納得できない内容だった 。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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