病気の治療体験記ネットで検索すれば、当ブログのような医療の「提供者側」のものよりも、脳外科の手術を受けられた患者さんのブログや闘病記をいろいろ見つけることができる。
ブログは半分プライベートなメディアという位置づけだと思うが、実際に病院で医者や看護師には言えないことも、赤裸々に書かれていたりして、自分の患者さんでなくても反省したり、治療のカイゼンのタネになることもある。
(他に「え、何でそんな無駄な検査してるんだろう」、とか「入院期間長過ぎじゃないか?」ということも。)
中には、術後の抜糸前の状態から、傷の状態を時系列でアップしているものがある。
自分としてはこういう写真を見ると「(この病院は)こういう皮切にしているということは、こういうアプローチで取ったのだろう。」「側頭葉がこう変形しているということは、すこし牽引が強かったんじゃないのかな」ということをまず考えてしまう。
しかし、患者さん側からすると、「えー、こんなに切るの !!?」ということに。
先日外来を受診された患者さんも「ネットで調べるていたら、30代の方の脳腫瘍のブログを見つけて、傷のこととか見ていたら怖くなってきて」おっしゃっていた。
患者さんが比較的高齢だったこともあり「体力的に大丈夫だろうか」と思われたらしい。
脳外科医的には、ともすると「皮膚や骨より脳では?」と思ってしまうのだが、当然、頭の手術は露出部に傷ができるので、他の人が見てもすぐ分かるため、傷(創)も大きな問題。
研修医の頃に、今は開業された上司に「いくら頭の中を完璧に手術しても、お前らの皮膚の縫合が下手だと、全部台無しになるんだよ。患者さんは皮膚しか見えねえんだからな」と怒られたことがある。
脳外科の世界でも、血管の病気はカテーテル治療が優勢だが、開頭手術ならシンプルにクリップ1本で再発リスクが(ほぼ)ゼロ、と思える動脈瘤に、わざわざステント使ってコイルを詰め、(頻度は低いとはいえ脳出血のリスクがある)抗血小板薬と胃薬を飲んでもらう治療を行い、しかも再発も無視できないという治療が広く行われている。
これもひとえに「頭を開ける」のが怖いからだと思うし、確かに自分が(誰かに)切られると思うとやっぱりすごく怖い(自分で自分の手術はできないので)。
いくらインカ帝国の時代から頭に孔を開けていたといっても、これは根源的な不安があるように思う。
最近書いたように、頭を開くというのも「ガパッ」というほどは開けないわけであるが、こういう不安には、できるだけ応えなければと思っている。
なので、可能な場合はできるだけ小さな傷で、そうでなければできるだけ目立たないようにしている。方向性が正しいかどうかは議論があるところではあるが、ただの自己満足ではないと信じたい。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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