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執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

無症状で動脈瘤が見つかることは必ずしも幸せに繋がらない (!?)

更新日:2019年12月17日

「母が自分と同じくらいの歳にくも膜下出血になったから心配なので、MRIを受ける方がよいだろうか」

という質問をいただいた。


くも膜下出血は命に関わることがある病気であり、出血を起こす前に、脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)が見つかれば、出血する前に対処できる。

もともと脳ドックもそういう目的で始まったのだから、出血しそうな動脈瘤が早期に見つかるのはいいことのように思われる。


しかし、よく考えてみるとそれほど単純な問題ではない。


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MRIを撮影して、「ああ、やっぱりMRI撮っておいてよかった」となるのは次のような場合だろう。

a. 「5mmとか7mmとか、それなりの余命が期待できる方」で、問題なく治療できた。

b. ”とりあえず”問題なかった。


一方、それ以外については悩ましい部分がある。


c. 治療する方がよいということで、手術(開頭手術/カテーテル手術)したけど後遺症が残ったとなると、症状が無かっただけに後悔が大きくなるかもしれない。

d.(症状はないが)治療困難な動脈瘤で手の打ちようがない(これは極めて稀ですが)

そして

e. ガイドラインでは治療を検討する」にはなっていない、4mmとか3mmの動脈瘤が見つかった。


担当医に相談したら、

「治療できなくはないが、出血のリスクは低いので、経過を見ればよいでしょう」

と言われた。

「低いってどれくらいですか?」

「1年間に200人に1人くらいです」


自分も含めて、こういう低い確率を"正しく"評価するのは難しい

「航空機事故の方が自分の運転で事故を起こすより遙かに起こりにくい」ことをうまく認識できないのと同様なのだ。

そのため、動脈瘤があると分かるだけで、QOLが下がることが知られている。


実際、ごく小さい動脈瘤が見つかっているご高齢の方で、関係ないめまいや、ふらつきがあると、「動脈瘤が出血したんじゃないか?」と不安になり、救急要請したり、外来でMRIを撮ってほしいと泣きつかれることもある。


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実際に、それまで元気だったのに、くも膜下出血を起こして、亡くなったり、大きな後遺症が残った患者さんをたくさんみていると、a.の患者さんをなんとか増やしたいと思う。

ただ今の仕組みでは、そのために他の多くの方に、もしかしたら不要な不安を与えている可能性があるかもしれない。


なので、例えば50歳になったから、区切りの健診として脳ドックをオプションに付けた、というのはもちろんありだと思う。

ほとんどの方は、「ああ、良かった」で済むのだが、無症候性の病変が見つかった場合にはこういうことになりますよ、という但し書きがあってもいいんじゃなかろうか。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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