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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

スケートボードにもヘルメットを

更新日:2021年8月4日

Yahoo! 個人に寄稿させてもらえることになりました。



ブログと同じで、特にノルマがあるわけではありませんが、オリンピック(Tokyo 2020)のダイジェストを見ていたら、スケートボード(ストリート)の堀米雄斗選手が気になったので、書いてみました。


ちなみに頭部外傷については、専門ではありません。しかし、外傷(ケガ)は全国津々浦々、どこでも起こるため、多くの急性期病院勤務の脳外科医がそうであるように、それなりのクオリティで対処する必要があります。

今まで勤務してきた病院も、NTT関東病院以外は3次救急だったので、重症頭部外傷の患者もしばしば診療・手術しています。


なので、「ヘルメット無しで頭から落ちたら死ぬぞ…」と気になる訳です。


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スノーボードでも2000年ころは、ヘルメットもニット帽も被らずに滑っている人がほとんどだったと思います。


ちょうどその頃会津若松にいたので、毎年数人は頭蓋内出血(急性硬膜下出血)で搬送されていました。


大体は手術になるほどではなかったと思いますが、1人、よく覚えている患者さんがいて、東京から滑りにきて、スノボで転倒してから徐々に頭痛がひどくなり、病院に来たときには重度意識障害で、大急ぎで手術した男性がいました。


頭蓋骨を開けると脳がパンパンに腫れており、頭蓋骨を戻さずに閉創したものの、傷が圧で開いてしまうような状態で、結局意識が戻ることはなく、東京の病院へそのまま搬送されていきました。


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そういう重症患者さんの情報を集めて、2002年に医局の先輩が論文を書いています。



スノーボードをやっている方はよく知っていると思いますが、エッジが引っかかって後方に転倒することがあります。




スノーボーダー人口を考えると、上記のような、手術が必要になる重症患者さんは稀ですが、後方に転倒して、衝撃がもろに伝わり、運が悪いと脳の真ん中付近にある太い静脈が引きちぎれたり、裂け目ができることがあります。


動脈からの出血は、血管の壁をつくる筋肉が収縮して止血されることもありますが、静脈にはそういう筋肉がないため、頭蓋内の圧が十分高くなるまで出血し続けるのです。


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スケートボードの場合は、こういう回転加速度による外傷より、直接的な頭蓋骨骨折や急性硬膜外血腫の危険性の方が高いかもしれません。


いずれにせよ、上手くなるためには練習量が必要なことは間違いないですが、安全に練習を続けるためにもヘルメット(とプロテクター)は必要でしょう。


ぜひ、堀米選手のようなヒーローから率先して身につけていただきたいです。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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