今頃の歳になって読む本ではないのだが、康永秀生先生の本。
雑誌「整形・災害外科」の連載に大幅加筆されたものということだが、結論からいうと
「こういう本に早く出会いたかった!!(涙)」
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今はどうか知らないが、自分が学部生のころは、臨床論文の書き方について体系的に教わることはなかったように思う
(もしくは、その授業に出ていなかっただけかもしれません。。。)
もしあったとしても、講義で習うのと、実際に「書かざるを得ない」状況で足掻くのは真剣さが全くことなるため、研修医生活の忙しさのなかで忘れてしまっているのではないだろうか。
結果として、実際に何か論文を書く段になって、我々がどうやって臨床論文を作成しているかというと、
「見よう見まね」で、自分の領域の同じような論文の真似をしつつ、
先輩医師に校正してもらって一応の形にし、
データや着眼点が良ければ、reviewに回って、reviewerへの返答に答える形で推敲
という経過で、掲載に至るのではないだろうか。
しかし、本来、医学論文も学術論文であり、体系的に書くことが求められている。
また、本書でも述べられているように、中国をはじめとして投稿される論文数が激増しているため、3.のreviewerとのやりとりの前に足切りになってしまう可能性が高くなっている。
つまり「きちんと書かれていなければ」reviewにも回らず、rejectされる可能性が高くなる。
そのため、きちんと書く=体系的に書くということが必要になのだ。
本書は、どうやれば体系的に書けるか、またそのためにはどういう手順で書くべきかということについて、順を追って書かれている。
例えば、「いつ論文を書き始めるべきか?」(p35)については
“研究の計画段階である。(中略) 研究を始める前から先行研究のレビューを完了させ、研究の背景・目的・方法をしっかり固めてから、データを取りに行かねばならない。つまり、データを収集する前の時点で、IntroductionとReferenceはほぼ全部書けるし、Methodsも書き始めることができるはずである。”
まったく、ごもっともなのだ。
こういう各セクション(Introduction, methodsなど)もさることながら、
“投稿先を選ぶ (1)「記念受験」はやめよう” (p146)とか、
”査読者・編集者がRejectを判断するポイント”(p154)
など、査読も多数され、編集委員もされている著者ならではの注意点(とその理由)も非常に参考になる。
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「書かなければ、何も残らない」
背表紙にこう書かれている。
東大脳外科の前教授、桐野高明先生は「学会発表なんて、ただの空気の振動だ」とまで言っていた。
何か気がついたら書く方が頭のなかもスッキリする。
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「疫学・統計の専門家でもないのに、疫学・統計のことについて生半可な知識をひけらかし、無意味な要求をするべきではない。」(p186)
と、"査読コメントの書き方"にある。
専門家でもないのに「統計がおかしいですよ」というletterを書いたりもしているので、ぎくりとするところが多数ある1冊だった。
若いドクターにはオススメです。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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