ちなみにUCAS Japanの結果で出てきた「大きさ」「前交通動脈/抗交通動脈分岐部動脈瘤」「ブレブ(不整形)」がくも膜下出血のリスク因子というのはどういう意味なのでしょう?
(ちなみに「大きさ」はどの研究でも共通の危険因子です。)
それ以前の多くの研究では、くも膜下出血の家族歴や、ご本人が以前にくも膜下出血を患ったこと(既往歴)、喫煙などが、危険因子とされてました。
最近のヨーロッパの研究でも喫煙は重要な危険因子とされています。
(UCAS Japanでは111人がくも膜下出血を起こしていますので、危険因子を上げていけば10個くらい、「統計学的に有意な」危険因子が出てきそうです。
しかし、求めているのはあくまで回帰式なので、上記3つを含むモデルが、その他の組み合わせより良いモデルだったということでしょう。)
もう一つの理由としては、前回までの議論と同様、家族歴や既往歴がある方は「見つかったら治療を受けることが多かった」ので、結果的にくも膜下出血を起こさなかったということかもしれません。
自分の家族が、くも膜下出血で死線をさまよったのを間近で見たり、あるいは不幸にも後遺症が残っていたりしていれば、自分に未破裂脳動脈瘤が見つかったら治療する方が多いと思いますし、実際そういう理由で治療を受けられる方は多いです。
なので、他のどの研究でも大体危険因子とされるのに、UCAS Japanでは危険因子に上がってこなかった「くも膜下出血の既往」や「家族歴」はすでに治療側に織り込まれていると考えるのが妥当です。
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われわれの研究では、治療を競合リスクと扱って同様の解析を行っていますが、実際のハザード比(つまり出血のリスク)については、これまでの方法で行った解析の数値とほとんど違いはありません。
結局、上記の3つのリスク因子というのは、「0.95%をさらに低くしようと思ったら、これらをもっと治療すべき」という情報なのです。
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ながながと書いてきましたが、結局、未破裂脳動脈瘤が見つかった場合に治療する方がいいのかどうかについて「誰にでも当てはまる正解は無い」としか言えません。
(ただし海綿静脈洞部の動脈瘤は、無症状であれば放っておいてよく、前小突起のすぐそばで上向きでない動脈瘤も治療の必要はないと考えています。)
*治療すべき未破裂脳動脈瘤についてはこちら
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