脳神経外科学会誌に掲載された、本邦における脳動脈瘤の特徴
Neurol Med Chir (Tokyo), 59 (11), 399-406 2019 Nov 15
Characteristics of Cerebral Aneurysms in Japan
Fusao Ikawa , Toshikazu Hidaka , Michitsura Yoshiyama , Hideo Ohba , Shingo Matsuda , Iori Ozono , Koji Iihara , Hiroyuki Kinouchi , Kazuhiko Nozaki , Yoko Kato , Akio Morita , Nobuaki Michihata , Hideo Yasunaga , Kaoru Kurisu
Reviewなので、新規の内容はあまりないが、これによると、
1. くも膜下出血については、欧米で発表された成績よりも良いらしい
津々浦々、脳外科治療(血管内手術を含む)が可能な病院があり、機を逸せずに治療可能なため、くも膜下出血による死亡が少ないということになっている。
2. また全国データベースでpropensity score-matchingを行い、開頭手術とコイル塞栓術を比べると、mRS>2以上の予後不良例に差が無く、重症例の急性期病院での死亡については開頭術の方が少なかった(7.1% vs 12.2% P<0.001)。
(共著に康永先生が入っているのはこの解析のため?)
どちらもできる病院では、それなりに"適切に"各治療に振り分けられていることだろうか。
「重症例はコイル」という方針は、頭蓋内圧のコントロールで不利になるからかもしれない。
ただ生死による評価は、植物状態になった患者さんも含まれている可能性があり、単純に「良い」とは評価できないだろう。
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小型動脈瘤についても一つのsectionが設けられていたが、同じ著者のJournal of Neurosurgeryの論文と同様の内容だった。(これについてのblogはこちら)
UCAS Japanの小型動脈瘤のデータから、
「5mm未満の動脈瘤3132個のうち、1131個が治療され、残りの動脈瘤から23件のくも膜下出血が起こっている。これはこの研究で出血した111件の20.7%だが、もし治療していなかった32.4%(36人?)に出血していたと推測される。出血率は高くないが、出血数は多い」
と意味不明な記述になっている。
もし治療していなかったら、「同じ割合で出血を起こす」のだったら、治療された動脈瘤というのは残っている動脈瘤と同じだったということだろうか?
少なくとも術者が「リスクが高そう」と思ったから治療したのでは??
また、「おそらく出血数は少なくない」ため、 小型動脈瘤の"ありうる"治療適応として、既存研究から、くも膜下出血の既往、コントロール困難な高血圧、前交通動脈瘤、若い方を提案している。
たしかに単変量&多変量解析すれば、これらが有意な因子と出てくるが、結局出血率としては年間0.30%(300人に1人)なので、どうもミスリーディングな感じがする。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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