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執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

左手は添えるだけ (ただし、正確に)

更新日:2019年3月28日

バイパス手術の吻合操作というのは、血管外科の基本操作であり、練習によって鍛えることができることだ。

脳外科の手術の中では、臨床経験が少なくても上級医を上回れる?数少ない手技かもしれない。

余談だが、故永田和哉先生(元NTT東日本関東病院脳外科部長)は「バイパスは糸が見えなくなってからが勝負だ」と仰っていたらしいが、真偽の程は明らかではない。


もともと、脳外科医になろうとする人は、(少なくとも本人の中では)他人より器用だと思っている医者がほとんどで、たしかに利き手の動きだけ見ていると、器用に道具を使う人が多い。

しかし、利き手でない方に関しては、なかなか”伝わっている意識の量”が少ないように思う。

つまり、右手の操作に集中すると、左手に必要な緊張が緩んだり、あるいは力が入り過ぎたりして、精度が落ちるのだ。


バイパスの吻合操作の際などは顕著で、右手で針を通す際、左手でカウンタープレッシャーをかけ、組織のダメージをできるだけ小さくする、あるいは針がスムーズに通るようにする必要がある。


脳外科,バイパス手術,内頚動脈閉塞
左手の隙間は最小限

この左手が自然と(?)開いてしまうのだ。


脳外科,バイパス手術
左手が開くと圧がかかりにくい

カウンタープレッシャーをかけるというのは、針の先端の圧を上げるということなので、左手の鑷子の隙間は狭い方がよい。

もちろんぴったりくっつけていると貫通させることができなくなってしまうが、そこにわずかな隙間をつくれば、スムーズに血管壁を貫通させることができる。


また、左手の鑷子の片方の刃しか、内腔に入れられないときは、片刃だけ入れて、その縁を狙って貫通させるようにすれば、やはりスムーズに通すことが可能になる。


脳外科,バイパス手術
壁は甘噛み、刃の縁を狙って挿入

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この左手(非利き手)のトレーニングには、やはり

  1. 卓上型顕微鏡で、左手で縫合する練習をする

  2. 食事を左手で食べる

というのが有効だと思う。


後者に関しては、「意味ない」という人もいるが、左手への意識の量を増やすのに繋がっていると、思っている。

繰り返しになるが、脳外科医は利き手が器用なのは当たり前、(吸引管を含めて)左手(非利き手)をうまく使えるかどうかが、特に難しい手術では重要になるものです。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)



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