下のような質問をいただきました。
難しい質問です。
僕も自分が患者だったら、むちゃくちゃ怖いと思います。
(脳)外科医は皆、自分が一番上手いと思っているので、他人に切られるなんて想像したくもないのです。
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開頭手術後の痛みがどれくらい痛いかというのは、当事者でないと分からないことですが、「手術後ずっと痛み止めが離せない」という方はほとんどいません。
ただ、低気圧や天気が悪いとき、季節の変わり目は“ずきっとすることがある”とおっしゃる方は多いです。
いわゆる古傷の痛み、というものだと思いますが、これ自体は皮膚を切るだけでもあるようなので、やはり開頭術の限界があります。
(脳自体には痛覚がないため、「脳が痛みを感じる」ということはありません。)
また、日本では、ちゃんとした術者が手術すれば、麻痺や言語障害などの神経学的な後遺症という観点からは、それほど差が出ない(?)ため、どうすれば痛みが少なくなるか、傷が目立たないか、という点は、各術者がこだわっているところだと思います。
(傷の大きさもそうですが、おそらくそれ以上に筋肉などの組織を、どう愛護的にやさしく扱うかなど。)
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未破裂動脈瘤や髄膜腫手術の際の典型的なパターンでいうと:
術当日・翌日は点滴の痛み止めを数時間おきに使う方がそれなりの割合でいます。
原則としては、ずっと続く痛みではないので、傷の痛みは我慢せずに痛み止めを使う方がよいです。
抜糸する頃(1週間目くらい)で、1日1回ロキソニンを飲んでいて、退院時も「痛かったら無理せずに痛み止め飲んで下さい」と伝えて、2週間後の外来では「今はときどき飲んでます」という感じです。
また、1ヶ月後には痛み止めは要りません、という方がほとんどです。
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傷の痛みそのものよりも、頭の傷を意識的/無意識的に“かばってしまう”ことで、頚の筋肉がこわばってしまい、緊張型頭痛を起こしていて痛いという方の方が多いように思います。
(とくに頚の筋肉の近くの手術である顔面痙攣や聴神経腫瘍の場合)
なので、術式・術者によって変わる部分はありますが、できるだけ首回りの筋肉を動かしていただくことで、痛みが残ることを少なくできるのではないかと思っています。
(実際には術者に確認して下さい!!)
あと、手術後、氷枕を頭に当てている方がいて、それ自体は別にいいのですが、後頭部から頚の筋肉を冷やすと、これも頚筋の血行を悪くして頭痛のもとになります。
目的にもよると思いますが、冷やすなら前頭部か、後頭部の骨の出っ張り(大後頭隆起)より上側だけがよいでしょう。
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一般論として、痛みをがまんしていると、意識がどうしてもそこに集中してしまうため、余計に痛くなります(痛みの悪循環)。
ずっと続く痛みではないと割り切って、痛いときには痛み止めをもらいましょう。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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