[Epub ahead of print]ではあるが、UCAS Japan の小型動脈瘤の解析結果が掲載された。
J Neurosurg. 2019 Jan 25:1-10. doi: 10.3171/2018.9.JNS181736. [Epub ahead of print]
Ikawa F, Morita A, Tominari S, Nakayama T, Shiokawa Y, Date I, Nozaki K, Miyamoto S, Kayama T, Arai H; Japan Neurosurgical Society for UCAS Japan Investigators.
UCAS Japanでも、以前のブログで指摘したように、生存分析で開頭クリッピングや血管内手術が「打ち切り」として扱われており、大きなバイアスになっている可能性がある。
論文内でも書かれているが、3,4mmの未破裂脳動脈瘤のうち37%が、くも膜下出血を起こすことなく治療を受けている。(3mmだけだと30%)
もちろん、小さいもの未破裂脳動脈瘤が見つかると、くも膜下出血の不安でQOLが低下することが知られており、毎日不安を抱えて生活するよりは思い切って開頭手術(当時は開頭手術の方が広く行われていた)を受ける方がよい、という判断もあるだろう。
ただ、それは医療者側の話し方もあるので、リスクが低ければ血圧のコントロールをして経過を見るというのが,多くの場合妥当なのではないだろうか。
結果として、3mmの動脈瘤でも5人に1人が治療を受けており、その結果、全体での出血率は0.36%/年だった...
年間 0.36%…!
因みにSUAVe studyという国立病院機構が行った、「5mm未満の動脈瘤を治療せずに経過を見た」多施設前向き観察研究の結果、単発動脈瘤の出血率は0.34%/年だった。
もしかすると、本論文の治療については、他の(もっと大きい)動脈瘤の治療のついでに治療されたものも含まれるのかもしれない。
しかし、0.36% vs 0.34% って誤差範囲ではないだろうか。
(出血リスクが無視できない、もしくはQOLを下げているという判断で37%は手術を受けていた)グループと、原則治療なし(増大した場合などは手術)のグループで結果に差が無い…。
もちろん3mmの動脈瘤でも、治療を受けた365人(無治療849人)のうち、「治療を受けなければくも膜下出血で死亡していた人」もいるかもしれない。
しかし、それはごくごく一部だろう。
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実は、2012年にUCAS Japanの結果がNew England Journal of Medicineに掲載された時、「5mm未満の出血率は0.3%程度だった」という発表がなされていた。
既にSUAVe studyの結果も世に知られていた後だったので、「そりゃ、同じ頃の研究なんだから、同じような治療適応だろう。5mm未満の出血率が似通ったものになるのは当然でしょ」と考えていたが、そうではなかったようだ。
当時の脳ドックガイドライン(1997)・脳卒中ガイドラインでは、「70歳未満、5mm以上の動脈瘤は治療を検討」とあり、5mm未満の動脈瘤については出血リスクは低いとされていた。
その中で、これほど多くの手術治療が(概ね200~250万円くらいの費用(多くは税金)を費やして)、行われていたことは驚きだ。
もちろん中には合併症が起こった人もいるかもしれない。
治療適応は外科医の裁量ではあるが、あまり変なことをしていると「脳外科医はアホか?」と思われるのではないか。
(ただしこれは2000年代前半の研究なので、今どうかは別です。)
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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