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執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

脳外科手術のための練習

更新日:4月18日

脳外科手術でも練習ができる部分があります。

(脳外科は臨床がカバーする範囲が広く、脊椎や脳深部刺激電極留置などはやや対象外かもしれません。)


やったことが無い手術を、いきなり患者さん相手に行うのは、(珍しい疾患・緊急手術などで仕方ないシチュエーションがあるにしても)いまどき倫理的に正当化できないと思います。


もちろん、助手として手術に入ることで、道具の使い方を覚え、脳がどれくらいの力を加えても大丈夫なのかなどを学んだ上で、「こいつなら大丈夫だろう」という状態になったら、上級医の監督の下、執刀医というポジションが得られる、というのが一般的でしょう。


何度か、いくつかの媒体で書いていますが、この執刀医のポジション、というかチャンスを与えられたときに確実にモノにしていく、というのが、臨床脳外科では非常に重要です。


つまり、「チャンスはもらったけど、思ったように行かなかった、『次は頑張ろう』」というのが一般的な考え方かもしれません。

ただ、『次の矢があると思って射るな』というのは古くから言われていることですが、気持ちの持ち方としてはそれです。

患者さんにとっては「次」は無いわけですから。


そこで練習です


血管障害、良性腫瘍、三叉神経痛、顔面痙攣など、脳槽の手術が対象ですが、脳槽・くも膜下腔の手技の一部は、練習することで、自分の脳を鍛えることができます。


結局、バイパスの練習ということになるのですが、単に「顕微鏡下に縫う」練習ということではありません。

もちろん、ガーゼにせよ、人工血管モデルにせよ、正確に針を通すというのはバイパスの練習になるわけですが、そこだけに注目すべきではありません。


バイパス練習で得られる主な効果は

  • 拡大した術野に、手に持った道具を素早く、あまり考えずに持って行くことができるようになる。

  • 特にハサミを持っていって、狙ったところを正確に切断できるようにする。

ことです。

(なので、良性腫瘍にしか興味ないから、バイパスの練習したくない、というのは多分間違いです)


つまり、針を通して結び目を作ったら終わり、ではなく、

  • 吻合操作を早くすることで、術野に道具を持って行くスピードを上げる

  • 結んだ糸を同じ長さになるように正確に切断する。

というところまで考えて、練習するのが良いと考えています。


世の中的には人工血管モデルで縫合練習する方が、実際の手術に似ているから良さそうな雰囲気もあります。

しかし主たる目的がそういうことなので、人工血管もでるだとやはり1万針とか5万針とかは練習できないんじゃないかなと思います。


なので、古典的?ではあるものの、ガーゼを縫う練習が、コスト的にも手間的にも一番効率良いと思っています。


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後期レジデントが練習用のマイクロ剪刀を探していて、(Amazon, 凄い!) と思ったハサミのLinkを貼っておきます。




ややバネ圧が高めかな、と思うのと、歯の当たりでザリザリする感じがありますが、練習用なら十分な品質だし、実際の手術でも多分使えると思います。



これ、送料込みで3,000円未満はあり得ない、などとアフィリエイトみたいな回でした。






(追記)

もともと在庫が10数点だったので、すぐに売り切れてしまったようです。

ここを見て購入しようと思った方、および、本当に角膜切るのに購入しようと思っていた方、すみません。


練習用の剪刀については、「母指と示指で挟んで切れればいいんだよ」と裁縫用の糸切りばさみでも、バネ圧が小さければ良いのではレベルで探してみたら、上のが見つかった、という経緯なので、同じようなコンセプトで探してみるといいかもしれません。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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